ネットワーク技術基礎
ICT支揶員に必要なネットワークの基礎知識とトラブル対応
ICT支援員にとって、ネットワークの基礎知識は必須です。「インターネットに繋がらない」「Wi-Fiが遅い」といったトラブルに対応するためには、ネットワークの仕組みを理解することが重要です。
📋 このページで学べること
- ネットワークの基本概念(LAN/WAN、プロトコル)
- IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ
- DNS、DHCPの仕組み
- ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、ハブ)
- 無線LAN(Wi-Fi)の規格と設定
- ネットワークトラブルシューティングの基本
1. ネットワークの基本概念
1.1 ネットワークとは
ネットワーク(Network)
複数のコンピュータや機器を接続し、データをやり取りできるようにした仕組みです。
ネットワークの種類
| 種類 | 範囲 | 説明 | 学校での例 |
|---|---|---|---|
| LAN (Local Area Network) |
狭い範囲 (建物内) |
同じ建物や敷地内のネットワーク | 校内ネットワーク、職員室LAN |
| WAN (Wide Area Network) |
広い範囲 (都市~国) |
離れた場所をつなぐネットワーク | 教育委員会と各学校を接続 |
| インターネット | 世界中 | 世界中のネットワークを接続した巨大なネットワーク | Webサイト閲覧、メール、クラウドサービス |
学校ネットワークの構成図
インターネット
|
[ファイアウォール]
|
[ルーター] ──── [教育委員会(WAN)]
|
[メインスイッチ]
|
├─ [職員室スイッチ] ── 教員PC、プリンター
|
├─ [普通教室1スイッチ] ── 電子黒板、教師用PC
| 無線LANアクセスポイント
| ↓ Wi-Fi
| 児童生徒用タブレット
|
└─ [普通教室2スイッチ] ── (同上)
1.2 プロトコル
プロトコル(Protocol)
ネットワーク上でデータをやり取りするための「通信の規約・ルール」です。人間が会話をするときに日本語や英語を使うように、コンピュータ同士も共通のルール(プロトコル)を使います。
主要なプロトコル
| プロトコル | 用途 | 説明 |
|---|---|---|
| TCP/IP | データ通信の基盤 | インターネットの標準プロトコル。確実にデータを届ける |
| HTTP/HTTPS | Webページ閲覧 | ブラウザとWebサーバー間の通信。HTTPSは暗号化版 |
| SMTP | メール送信 | メールを送るためのプロトコル |
| POP3/IMAP | メール受信 | メールを受け取るためのプロトコル |
| DNS | 名前解決 | ドメイン名をIPアドレスに変換 |
| DHCP | IP自動割り当て | 端末に自動でIPアドレスを割り当てる |
2. IPアドレス
2.1 IPアドレスとは
IPアドレス(Internet Protocol Address)
ネットワーク上の機器を識別するための「住所」のようなものです。郵便を送るときに住所が必要なように、データを届けるにはIPアドレスが必要です。
IPv4アドレス
現在最も一般的なIPアドレスの形式です。
- 形式:
192.168.1.10のように、0~255の数字を「.(ドット)」で4つ区切った形 - 例:
192.168.1.1(ルーターのアドレス)192.168.1.100(PCのアドレス)8.8.8.8(GoogleのDNSサーバー)
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス
| 種類 | 範囲 | 説明 |
|---|---|---|
| グローバルIP | インターネット全体 | インターネット上で一意(世界に1つ)のアドレス。ISP(プロバイダー)から割り当てられる |
| プライベートIP | 組織内(LAN内) | 組織内でのみ使えるアドレス。外部とはルーターが変換(NAT)して通信 |
プライベートIPアドレスの範囲
10.0.0.0 ~ 10.255.255.255172.16.0.0 ~ 172.31.255.255192.168.0.0 ~ 192.168.255.255★学校でよく使われる
192.168.1.100)がWebサイト(203.0.113.50)にアクセスする場合:
- PCはルーター(
192.168.1.1)にデータを送る - ルーターがプライベートIP(
192.168.1.100)をグローバルIP(203.0.113.1)に変換(NAT) - インターネットを経由してWebサーバーに届く
2.2 サブネットマスク
サブネットマスク
IPアドレスを「ネットワーク部」と「ホスト部」に分けるためのマスク(境界線)です。
サブネットマスクの表記
- 一般的な形式:
255.255.255.0 - CIDR表記:
/24(「255.255.255.0」と同じ意味)
よく使われるサブネットマスク
| サブネットマスク | CIDR | 使用可能なホスト数 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 255.255.255.0 | /24 | 254台 | 小規模ネットワーク(学校の1フロア等) |
| 255.255.0.0 | /16 | 65,534台 | 大規模ネットワーク(学校全体等) |
| 255.255.255.128 | /25 | 126台 | より細かく分割したい場合 |
192.168.1.100サブネットマスク:
255.255.255.0→ネットワーク部:
192.168.1(どのネットワークか)→ホスト部:
100(ネットワーク内のどの機器か)
2.3 デフォルトゲートウェイ
デフォルトゲートウェイ
他のネットワークやインターネットに出るための「出口」です。通常はルーターのIPアドレスを指定します。
設定例
- IPアドレス:
192.168.1.100 - サブネットマスク:
255.255.255.0 - デフォルトゲートウェイ:
192.168.1.1(ルーター)
3. DNS(Domain Name System)
3.1 DNSとは
DNS
ドメイン名(例:www.example.com)をIPアドレス(例:203.0.113.50)に変換する仕組みです。人間が覚えやすい名前と、コンピュータが使う数字を対応付ける「電話帳」のようなものです。
DNSの仕組み
- ユーザーがブラウザに「www.mext.go.jp」と入力
- PCがDNSサーバーに「www.mext.go.jpのIPアドレスは?」と問い合わせ
- DNSサーバーが「210.224.205.60」と回答
- PCがそのIPアドレスにアクセス
DNS名前解決の流れ
[PC]
↓ ① 「www.mext.go.jp のIPアドレスは?」
[DNSサーバー(例:8.8.8.8)]
↓ ② 「210.224.205.60 です」
[PC]
↓ ③ IPアドレス 210.224.205.60 にアクセス
[Webサーバー(文部科学省)]
よく使われるDNSサーバー
| 提供元 | プライマリDNS | セカンダリDNS |
|---|---|---|
| Google Public DNS | 8.8.8.8 |
8.8.4.4 |
| Cloudflare | 1.1.1.1 |
1.0.0.1 |
| OpenDNS | 208.67.222.222 |
208.67.220.220 |
3.2 DNSキャッシュ
DNSキャッシュ
一度調べたドメイン名とIPアドレスの対応を一時的に保存しておく仕組みです。毎回DNSサーバーに問い合わせる手間を省き、高速化します。
DNSキャッシュのクリア方法
DNSキャッシュが古い情報のままだと、正しいIPアドレスにアクセスできません。その場合はキャッシュをクリアします。
Windows
macOS
Chrome(ブラウザのDNSキャッシュ)
4. DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)
4.1 DHCPとは
DHCP
ネットワークに接続した機器に対して、自動的にIPアドレスを割り当てる仕組みです。手動で設定する手間が省け、IPアドレスの重複を防げます。
DHCPの仕組み
- DHCP Discover:PCが「DHCPサーバーはいませんか?」とネットワーク全体に問い合わせ
- DHCP Offer:DHCPサーバーが「私がいます。このIPアドレスを使ってください」と提案
- DHCP Request:PCが「そのIPアドレスを使います」と要求
- DHCP Ack:DHCPサーバーが「OK、割り当てました」と確認
DHCPで自動設定される項目
- IPアドレス(例:
192.168.1.100) - サブネットマスク(例:
255.255.255.0) - デフォルトゲートウェイ(例:
192.168.1.1) - DNSサーバー(例:
8.8.8.8) - リース期間(IPアドレスを使える期間)
4.2 固定IPアドレス(手動設定)
固定IPが必要な機器
- ネットワークプリンター(常に同じIPでアクセスできるように)
- サーバー(ファイルサーバー、Webサーバー等)
- ネットワークカメラ
- 電子黒板(一部の機種)
固定IP設定時の注意点
- DHCPの範囲外に設定:DHCPが
192.168.1.100~200を割り当てる場合、固定IPは192.168.1.10など範囲外にする - 重複を避ける:既に使われているIPアドレスは設定しない
- 台帳管理:どの機器にどのIPを割り当てたか記録する
5. ネットワーク機器
5.1 ルーター(Router)
ルーター
異なるネットワーク同士を接続し、データを適切な経路に転送する機器です。家庭や学校では、LANとインターネットを繋ぐ役割を果たします。
ルーターの機能
- ルーティング:データを適切な経路に転送
- NAT/NAPT:プライベートIPとグローバルIPを変換
- DHCP機能:IPアドレスの自動割り当て
- ファイアウォール:不正アクセスを防ぐ
- 無線LANアクセスポイント:Wi-Fi機能(Wi-Fiルーターの場合)
5.2 スイッチ(Switch)
スイッチ(スイッチングハブ)
複数の機器を接続し、データを適切な宛先にのみ送る機器です。MACアドレスを学習し、効率的にデータを転送します。
スイッチの特徴
- MACアドレスを見て、宛先にのみデータを送る(無駄な通信を減らす)
- 全二重通信(送信と受信を同時に行える)
- ポート数が多い(8ポート、16ポート、24ポート等)
- 管理機能付き(VLAN、QoS等)と管理機能なしがある
スイッチの接続例
[ルーター]
|
[スイッチ]
/ | | \
PC1 PC2 PC3 プリンター
5.3 ハブ(Hub)
ハブ(リピータハブ)
複数の機器を接続する機器ですが、スイッチと違い、全てのポートにデータを送信します(ブロードキャスト)。現在はほとんど使われていません。
ハブとスイッチの違い
| 項目 | ハブ | スイッチ |
|---|---|---|
| データの送り方 | 全ポートに送信(ブロードキャスト) | 宛先にのみ送信 |
| 効率 | 低い(無駄な通信が多い) | 高い |
| 価格 | 安い | やや高い |
| 現在の使用状況 | ほぼ使われない | 主流 |
5.4 アクセスポイント(Access Point)
無線LANアクセスポイント
有線LANと無線LAN(Wi-Fi)を橋渡しする機器です。タブレットやスマートフォンを無線でネットワークに接続できるようにします。
アクセスポイントの役割
- 有線LANを無線LANに変換
- 複数の無線端末を同時接続
- SSIDとパスワードで接続管理
- 暗号化(WPA2/WPA3)
アクセスポイントの構成
[ルーター] ─ [スイッチ] ─ [アクセスポイント]
↓ Wi-Fi
タブレット(無線接続)
6. 無線LAN(Wi-Fi)
6.1 Wi-Fi規格
Wi-Fi規格の種類
| 規格 | 周波数帯 | 最大速度(理論値) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Wi-Fi 4 (IEEE 802.11n) |
2.4GHz / 5GHz | 600Mbps | 古い規格だが広く普及 |
| Wi-Fi 5 (IEEE 802.11ac) |
5GHz | 6.9Gbps | 現在の主流 |
| Wi-Fi 6 (IEEE 802.11ax) |
2.4GHz / 5GHz | 9.6Gbps | 最新規格。多数同時接続に強い |
| Wi-Fi 6E (IEEE 802.11ax) |
2.4GHz / 5GHz / 6GHz | 9.6Gbps | 6GHz帯追加。混雑回避 |
6.2 2.4GHz帯と5GHz帯
| 項目 | 2.4GHz帯 | 5GHz帯 |
|---|---|---|
| 速度 | △ 遅い | ◎ 速い |
| 障害物に対する強さ | ◎ 強い(壁を越えやすい) | △ 弱い |
| 到達距離 | ◎ 長い | ○ やや短い |
| 混雑 | ✗ 混雑しやすい(Bluetooth、電子レンジと干渉) | ○ 比較的空いている |
| 推奨用途 | 遠い場所、障害物が多い場所 | 高速通信が必要な場所 |
- 5GHz帯:教室内でタブレット授業(高速・安定重視)
- 2.4GHz帯:体育館や校庭など遠い場所(到達距離重視)
6.3 SSIDとパスワード
SSID(Service Set Identifier)
無線LANネットワークの名前です。Wi-Fi接続時に選択する「○○-WiFi」などの表示がSSIDです。
SSIDの設定
- わかりやすい名前:「SchoolWiFi-Staff」「SchoolWiFi-Student」など
- 学校名を直接入れない:セキュリティのため
- 用途別に分ける:
- 教職員用
- 児童生徒用
- 来客用(ゲストネットワーク)
パスワード(暗号化キー)
Wi-Fiに接続するためのパスワードです。WPA2/WPA3による暗号化が必須です。
- 強固なパスワード:12文字以上、英数字+記号の組み合わせ
- 適切なタイミングでの変更:
- 漏洩の疑いがある場合
- 外部の人が接続していた可能性がある場合
- ※定期的な変更よりも、WPA3など強力な暗号化方式の採用が重要です
- 安易なパスワードは禁止:「password」「12345678」等
6.4 Wi-Fiトラブルシューティング
よくあるWi-Fiトラブルと対処法
1. 「Wi-Fiに繋がらない」
- ✓ SSIDとパスワードが正しいか確認
- ✓ 機内モードになっていないか確認
- ✓ アクセスポイントの電源が入っているか
- ✓ 端末を再起動
- ✓ Wi-Fi設定を削除して再登録
2. 「Wi-Fiは繋がるがインターネットに繋がらない」
- ✓ ルーターの電源が入っているか
- ✓ LANケーブルが抜けていないか
- ✓ DNSサーバーの設定を確認(8.8.8.8に変更して試す)
- ✓ ルーターを再起動
3. 「Wi-Fiが遅い」
- ✓ 接続台数が多すぎないか
- Wi-Fi 4 (802.11n): 15~20台が目安
- Wi-Fi 5 (802.11ac): 20~30台が目安
- Wi-Fi 6 (802.11ax): 50台以上も可能
- ※実際の接続可能台数は、帯域幅の使用状況により変動します
- ✓ 2.4GHz帯の混雑(5GHz帯に切り替え)
- ✓ 電子レンジやBluetoothとの干渉
- ✓ アクセスポイントとの距離が遠い
- ✓ チャンネルの重複(チャンネル変更)
4. 「特定の場所だけ繋がらない」
- ✓ 電波が届いていない(アクセスポイントの追加が必要)
- ✓ 鉄筋コンクリートの壁で遮断されている
- ✓ 金属製のロッカーや棚が電波を遮っている
7. 基本的なネットワークコマンド
7.1 ipconfig / ifconfig
自分のIPアドレスを確認する
Windows
詳細情報を表示:
macOS / Linux
または
7.2 ping
相手との通信を確認する
pingコマンドは、指定したIPアドレスやドメイン名に対して通信が可能かを確認します。
使い方
または
結果の見方
- 応答がある:通信OK(「Reply from...」と表示)
- 応答がない:通信NG(「Request timed out」と表示)
- time=○○ms:応答時間(小さいほど速い)
- 1~30ms:非常に速い
- 30~100ms:普通
- 100ms以上:遅い
ping 127.0.0.1→ 自分のPCのネットワーク機能が正常か確認ping 192.168.1.1→ ルーターまで通信できるか確認ping 8.8.8.8→ インターネットに通信できるか確認ping www.google.com→ DNSが正常に動作しているか確認
7.3 traceroute / tracert
通信経路を調べる
データが目的地に到達するまでに、どのルーターを経由しているかを表示します。
Windows
macOS / Linux
使い道
- 通信が遅い原因の特定
- どこで通信が止まっているか確認
7.4 nslookup
DNSの名前解決を確認する
ドメイン名がどのIPアドレスに変換されているかを確認します。
使い道
- DNSが正しく動作しているか確認
- 特定のドメインのIPアドレスを調べる
📚 まとめ
ネットワークの基礎知識は、ICT支援員としてトラブルシューティングの第一歩です。全てを完璧に理解する必要はありませんが、基本的な用語と仕組みを知っておくことで、問題の切り分けや業者への説明がスムーズになります。
最低限押さえておくべきポイント
- IPアドレス:ネットワーク上の住所
- DNS:ドメイン名をIPアドレスに変換
- DHCP:IPアドレスを自動割り当て
- ルーター:異なるネットワークを繋ぐ
- スイッチ:同じネットワーク内の機器を繋ぐ
- Wi-Fi:無線LAN。5GHz帯推奨、WPA2/WPA3必須
- ping:通信確認の基本コマンド
実際のトラブル対応では、これらの知識を組み合わせて原因を特定していきます。わからないことがあれば、遠慮せず専門業者やベテランのICT支援員に相談しましょう。
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📖 参考資料
- IPA 情報処理推進機構 - IT用語辞典
- 総務省 - ICT利活用
- 文部科学省 - 教育の情報化