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授業中のトラブル発生時

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目次

1. 学校Wi-Fiの基礎知識

1.1 学校ネットワークの構成

学校ネットワークの全体像

学校のインターネット接続は、複数の層で構成されています。トラブルの原因切り分けには、この構造の理解が不可欠です。

ネットワーク構成図
インターネット
    ↓
【SINET(学術情報ネットワーク)】【自治体・教育委員会ネットワーク】
  - ファイアウォール
  - Webフィルタリング
  - ウイルス対策
    ↓
【学校内ネットワーク】
  - ルーター
  - スイッチ
    ↓
【Wi-Fiアクセスポイント(AP)】
  - 各教室、廊下、体育館等に設置
    ↓
【児童生徒の端末(Chromebook、iPad等)】
                

各層の役割とトラブル時の影響範囲

役割 トラブル時の影響 対応可能者
SINET 全国の学校を高速回線で接続 全校が影響を受ける(稀) 文部科学省・SINET
自治体NW セキュリティ、フィルタリング 自治体内の全学校が影響 教育委員会・通信事業者
学校内NW 校内のルーター・スイッチ その学校全体が影響 学校管理者・ICT支援員・業者
Wi-Fi AP 無線LANの電波を発信 特定の教室・エリアのみ影響 ICT支援員が対応可能
端末 児童生徒が使用 その端末のみ影響 ICT支援員が対応可能

トラブル切り分けの鉄則

「1台だけ? 複数台? 全部?」を最初に確認しましょう。

  • 1台だけ繋がらない → 端末側の問題(設定、故障)
  • 特定の教室だけ → Wi-Fi APの問題
  • 学校全体で繋がらない → ルーター・回線の問題

1.2 Wi-Fi規格の理解

規格名 別名 最大速度 周波数帯 学校での導入状況
802.11ac Wi-Fi 5 6.9Gbps 5GHz GIGAスクール第1期の標準
802.11ax Wi-Fi 6 9.6Gbps 2.4GHz / 5GHz GIGA第2期で導入増加中
802.11n Wi-Fi 4 600Mbps 2.4GHz / 5GHz 旧式APで残存(更新推奨)

2.4GHz vs 5GHz 帯域の違い

2.4GHz帯

  • メリット:電波が遠くまで届く、壁を通過しやすい
  • デメリット:混雑しやすい(電子レンジ、Bluetooth等と干渉)、速度が遅い
  • 用途:校舎の端、鉄筋コンクリート建物

5GHz帯

  • メリット:高速、干渉が少ない、同時接続に強い
  • デメリット:電波が届きにくい、壁に弱い
  • 用途:教室内、動画視聴、オンライン授業

学校では5GHz帯を優先

1人1台端末環境では、5GHz帯(Wi-Fi 5/6)の利用が推奨されます。高速で同時接続数が多く、動画視聴にも対応できます。

1.3 アクセスポイント(AP)の配置と接続台数

適切なAP配置の目安

1つのAPあたりの推奨接続台数

推奨接続台数:20-30台

Wi-Fi 6対応APなら最大40-50台まで接続可能ですが、実際には20-30台以下に抑えることで安定した通信を確保できます。

40人学級で全員が同時接続する場合、教室に2台のAPを設置するのが理想です(予算の都合で1台の学校も多い)。

電波強度の確認方法

スマートフォンやPCでWi-Fi電波強度測定アプリを使用し、各教室で電波状況をチェックします。

2. 接続トラブル診断フローチャート

Wi-Fiトラブルは症状により原因が異なります。以下のフローチャートで原因を特定し、対処しましょう。

診断フロー① 「Wi-Fiマークが出ない」

【症状】Wi-Fiアイコンが表示されない

▼ Step 1: 機内モードの確認
  → 機内モードがONになっていないか?
     YES → 機内モードOFF → 解決
     NO  → Step 2へ

▼ Step 2: Wi-FiがONか確認
  → 設定画面でWi-FiスイッチがONか?
     YES → Step 3へ
     NO  → Wi-FiをONにする → 解決

▼ Step 3: SSIDが見えるか確認
  → Wi-Fi一覧に学校のSSIDが表示されるか?
     YES → Step 4へ(接続できない問題)
     NO  → APの電波が届いていない
           → APの電源確認、場所移動、AP増設検討

▼ Step 4: 端末の再起動
  → 端末を再起動してみる
     → 80%のトラブルはこれで解決
                

診断フロー② 「接続できるがインターネットに繋がらない」

【症状】Wi-Fiには接続できているが、Webページが開けない

▼ Step 1: 他の端末で確認
  → 他の端末でもインターネットに繋がらない?
     YES → 学校全体の回線トラブル
           → ルーター再起動、業者へ連絡
     NO  → Step 2へ(端末固有の問題)

▼ Step 2: DNSの問題か確認
  → ブラウザで「8.8.8.8」と入力して開けるか?
     YES → DNS設定の問題
           → DNS手動設定(8.8.8.8、8.8.4.4)
     NO  → Step 3へ

▼ Step 3: プロキシ設定の確認
  → 設定 → ネットワーク → プロキシを確認
     → 不要なプロキシ設定があれば削除
     → 解決

▼ Step 4: IPアドレスの再取得
  → ネットワーク設定をリセット
  → Wi-Fi接続を削除 → 再接続
     → 解決
                

診断フロー③ 「速度が遅い・動画が止まる」

【症状】Wi-Fiには繋がるが、速度が遅い、動画がカクカクする

▼ Step 1: 全体的に遅いか、特定端末だけか?
  → 複数の端末で遅い?
     YES → 帯域不足・AP過負荷
           → 同時接続数を減らす、AP増設検討
     NO  → Step 2へ(端末側の問題)

▼ Step 2: 電波強度の確認
  → Wi-Fi電波強度を確認(-70dBm以上が理想)
     弱い → APに近づく、別のSSIDに接続
     強い → Step 3へ

▼ Step 3: 2.4GHz vs 5GHzの確認
  → 現在2.4GHz接続か?
     YES → 5GHz SSIDに切り替え → 速度改善
     NO  → Step 4へ

▼ Step 4: 端末のストレージ確認
  → 端末の空き容量が10%以下?
     YES → 不要ファイル削除 → 動作改善
     NO  → 回線・AP・端末の複合的問題
           → 業者へ詳細調査依頼
                

3. 頻出トラブルTOP10と即効対処法

学校現場で最も多く発生するWi-Fiトラブルと、その場で実行できる対処法を紹介します。

1位 「Wi-Fiが見つからない」

原因

  • 機内モードがON
  • Wi-Fi機能がOFF
  • APの電波が届いていない
  • APの電源が切れている

即効対処法(1分)

  1. 機内モードOFFWi-Fi ONを確認
  2. 端末再起動(これで80%解決)
  3. APに近づいて再確認
  4. 別の教室で接続できるか確認(AP故障の判断)
時短テクニック: 児童生徒に「設定画面のスクリーンショット」を撮らせると、遠隔でも状況確認ができます。

2位 「パスワードが間違っていると表示される」

原因

  • パスワードの入力ミス(大文字・小文字、全角・半角)
  • 間違ったSSIDに接続しようとしている
  • 過去の接続情報が残っている(パスワード変更後)

即効対処法(2分)

  1. 正しいSSIDに接続しているか確認(学校名-5GHz等)
  2. パスワードを目で見える状態にして再入力
  3. 大文字・小文字、「0(ゼロ)」と「O(オー)」、「1(イチ)」と「l(エル)」を確認
  4. 保存済みのWi-Fi設定を削除 → 再接続

3位 「接続はできるがインターネットに繋がらない」

原因

  • DNS設定の問題
  • プロキシ設定の誤り
  • 学校の回線ダウン
  • Webフィルタリングによるブロック

即効対処法(3分)

  1. 他の端末でも同じか確認 → YES なら学校回線の問題
  2. DNSを手動設定:8.8.8.8(Google Public DNS)
  3. ブラウザで「chrome://net-internals/#dns」→ 「Clear host cache」
  4. Wi-Fi接続を削除 → 再接続(IPアドレス再取得)

4位 「教室で一斉に繋がらなくなる」

原因

  • APの過負荷(40台以上の同時接続)
  • APのフリーズ・再起動
  • 電源トラブル

即効対処法(5分)

  1. APの電源ランプを確認(消灯していれば電源トラブル)
  2. AP再起動(電源OFF→30秒待機→ON、またはPoE給電リセット)
  3. 接続台数を減らす(半分の児童生徒は別のSSIDへ)
  4. それでも直らない → 業者へ緊急連絡

5位 「特定のサイト・アプリだけ開けない」

原因

  • Webフィルタリングによるブロック
  • サイト側のメンテナンス・障害
  • MDMによるアプリ制限

即効対処法(3分)

  1. 別の端末で同じサイトを開けるか確認
  2. Webフィルタリング管理画面でブロックログを確認
  3. 教育目的で必要なサイト → フィルタリングホワイトリストに追加
  4. サイト側の問題の場合 → 別のサイト・サービスで代替

6位 「動画が止まる・カクカクする」

原因

  • 帯域不足(全員が同時に動画視聴)
  • 2.4GHz接続で速度が遅い
  • APの性能不足

即効対処法(2分)

  1. 5GHz SSIDに切り替え(速度2-3倍)
  2. 動画の画質を下げる(1080p → 720p → 480p)
  3. 同時視聴を避ける(グループごとに時間差で視聴)
  4. 動画を事前ダウンロードして端末内で再生

7位 「午後になると遅くなる」

原因

  • 全校一斉使用による輻輳(ふくそう)
  • 自治体ネットワークの帯域不足
  • インターネット全体の混雑(昼休み等)

即効対処法(計画的対応)

  1. 時間帯別の利用調整(1-3校時は低学年、4-6校時は高学年等)
  2. 重い処理(動画視聴、大容量ダウンロード)は朝一番に実施
  3. 教育委員会へ帯域増強の要望を提出
  4. オフライン教材の活用

8位 「雨の日に繋がりにくい」

原因

  • 湿気によるAP・ケーブルの不具合
  • 電波干渉の増加
  • 校舎の構造による電波減衰

即効対処法(2分)

  1. APのLANケーブル接続を確認(ゆるみ、結露)
  2. 別のAPに切り替え
  3. 窓際のAPは避ける(雨の影響を受けやすい)
  4. 慢性的な場合 → 業者へAP移設・増設を相談

9位 「校舎の端で繋がらない」

原因

  • APの電波が届かない(距離・障害物)
  • ローミング(AP間の自動切り替え)がうまく機能しない

即効対処法(1分)

  1. 手動で近くのAPのSSIDに接続
  2. Wi-Fiを一度OFFにして、再度ONにする(ローミング再実行)
  3. 根本的解決 → APの増設を検討

10位 「iPadだけ繋がらない(ChromebookはOK)」

原因

  • iOS設定の問題
  • MDMプロファイルの不具合
  • Wi-Fi認証方式の非対応

即効対処法(3分)

  1. 設定 → 一般 → リセット → 「ネットワーク設定をリセット」
  2. MDMプロファイルの再インストール
  3. iOSのアップデート確認
  4. Chromebookと同じSSIDに接続できるか確認(証明書認証の問題かも)

4. 授業中の緊急対応マニュアル

授業を止めないための原則

授業中のトラブルは学習の流れを止めないことが最優先です。完璧に直すことよりも、授業を継続できる状態にすることを目指しましょう。

4.1 5分以内にできる応急処置

児童生徒自身でできる対処法(教員が指示)

教員向け指導例

「みなさん、Wi-Fiの調子が悪い人は、まず端末を再起動してみましょう。電源ボタンを長押しして『再起動』を選びます。これで大体直ります!」

4.2 10分以内の対処法(ICT支援員が実施)

対処法 所要時間 効果
ネットワーク設定のリセット 2分/台 設定 → ネットワーク → リセットで初期状態に
固定IP → DHCPに変更 2分/台 手動IP設定が原因の場合に有効
DNSサーバー手動設定 2分/台 8.8.8.8、8.8.4.4に変更
APの再起動 3-5分 教室全体が影響を受けている場合に有効
別の教室への移動 5-10分 APの故障が疑われる場合

4.3 授業を止めない代替案

オフライン教材への切り替え

  • 事前にダウンロード済みのPDF、動画を使用
  • 端末内のOfficeアプリ(Word、スライド)を活用
  • Scratchオフライン版でプログラミング
  • デジタル教科書(オフライン対応)

テザリング利用(学校方針に従う)

  • 教員のスマホからテザリング
  • モバイルWi-Fiルーターの活用
  • ※個人情報保護、通信費の問題に注意
  • 緊急時のみ、管理職の許可を得て使用

グループ学習への転換

  • 正常な端末を共有(2-3人で1台)
  • Wi-Fi不要の協働学習に変更
  • 紙ベースの学習活動に切り替え
  • トラブルを「学びの機会」に(情報モラル教育)

別の教室への移動

  • 空き教室、特別教室へ移動
  • 体育館、図書室のWi-Fiを利用
  • 次の授業時間に振替
  • 校内の別のAPエリアへ

4.4 トラブル発生時の児童生徒への声かけ例

ポジティブなコミュニケーション

トラブルは「学びの機会」です。児童生徒が問題解決力を身につけるチャンスと捉えましょう。

❌NG例:
⭕OK例:

まとめ

Wi-Fiトラブル対応の重要ポイント

  1. まずは端末再起動:80%のトラブルはこれで解決
  2. 「1台?複数?全部?」で原因を切り分け:効率的な対処につながる
  3. 5GHz帯を優先:速度・安定性が格段に向上
  4. APの接続台数は20-30台以下:過負荷を避ける
  5. 授業を止めない代替案を常に用意:オフライン教材、グループ学習
  6. 定期メンテナンスでトラブル予防:AP再起動、ファームウェア更新
  7. トラブルは学びの機会:児童生徒の問題解決力を育てる

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